【事例】FAX・チャット・Excelに散らばった「受注情報・工事手配」をAppSheetとGASで一元化!社内システムとクラウドをつないだ京都の老舗家電販売「ヤサカ電気」様のDX

「工事の状況を確かめるのに、いくつものツールを見比べないといけない」

商品の販売に加えて、工事や倉庫からの商品の引き取りまで手配する会社では、FAX・チャット・管理表とツールごとに情報が分かれ、受注後の状況を追うのに手間がかかりがちです。

京都の老舗家電店・株式会社ヤサカ電気様も、同じ悩みを抱えていました。

本記事では、社内サーバーの受注データをクラウドに自動でつなぎ、Googleのアプリ作成ツール「AppSheet」で、工事の手配・引き取り・リサイクル券・お問い合わせの管理をひとつにまとめた取り組みをご紹介します(京都市の補助金を活用、期間は約6か月)。

AppSheetとは?
プログラミングなしで業務アプリをつくれるGoogleのツールです。スマホやパソコンから使え、Googleスプレッドシートにデータを保管できます。

お客様紹介:株式会社ヤサカ電気 様

Web本店
実店舗(京都市上京区)

株式会社ヤサカ電気様は、昭和39年(1964年)創業の京都の老舗家電店です。家電を中心に楽器・家具まで3万点以上を扱い、「できるだけ多くの商品を、できる限り安く」をコンセプトにしています。

販売の中心は、自社サイト「ぎおん WEB本店」や楽天・Amazon・Yahoo!などのネット通販です。京都市上京区の実店舗「ぎおん電気」では店頭受け取りや購入相談(事前予約がおすすめ)もでき、ネットの安さと地元のお店の安心感を両立しています。

エアコン等の工事は協力工事業者さま、商品の保管は外部の倉庫会社さまと連携しています。

店舗の様子は公式Instagramでも発信中です。

▶ ヤサカ電気様 公式Instagram(@yasakadenki_gion)

サクモフは2025年秋のGoogle Workspace(Googleの業務用ツール一式)導入に続き、業務アプリの開発をご支援しました。

経営者の悩みと、現場の課題(Before)

ヤサカ電気様では、受注そのものは社内のサーバーにある販売管理システム(以下、基幹システム)でしっかりと管理されていました。一方で、受注後の工事や引き取りの手配は複数のツールにまたがっており、件数が増えるにつれて負担が大きくなっていました。インターネット事業部のN課長は、業務改善の必要性を次のように語っています。

インターネット事業部 N課長

「工事は商品を受注して終わりではありません。打ち合わせや業者さまとの連携が増えていきます。それを効率よくスムーズに進めるには、システムの効率化がどうしても必要でした」

ヒアリングを重ねて見えてきた課題は、大きく4つです。いずれも、件数が増える中で現場の工夫と頑張りで支えてきたものの、仕組みが事業の成長に追いついていなかった部分です。

1. 工事の進み具合を確かめるのに手間がかかっていた

工事の依頼書は社内のデータベースソフト(Microsoft Access)で作り、インターネットFAXで協力業者さまに送っていました。送った後の状況やお客様との日程調整は、業者さまごとのチャットでやり取りしていました。

そのため、いま何が決まっているのかを確かめるには、FAXとチャット(時には電話で確認)を見比べる必要があり、手間がかかっていました。

2. 同じ情報を何度も手で入力していた

工事の日程が決まると、協力業者さまが倉庫会社さまから商品を受け取る「引き取り」の手配に進みます。ただ、工事の情報と引き取りの情報は番号でつながっていませんでした。そのため担当者が案件を目で確認し、倉庫会社さまと共有しているクラウドの管理表(Airtable)に手で入力し直していました。

引き取り品の管理番号も手書きで付けていました。家電リサイクル券の番号はExcelに書き写していました。同じ案件の情報を、ツールが変わるたびに入力し直していたのです。

3. 受注データが社内のパソコンからしか使えなかった

受注データは、基幹システムに入っており、社内のパソコンからしか見られませんでした。N課長は当時をこう振り返ります。

インターネット事業部 N課長

「Accessを使っているのは、結局サーバーのデータが社内にしかないから。クラウドで扱えるというのは、やっぱり大きな違いです」

さらに、基幹システムには「この注文は工事あり」と見分けられる欄がありませんでした。備考欄などの記載をもとに担当者が判断していたため、慣れた人でないと分かりにくい面がありました。

4. 情報が担当者ごとに分かれていた

電話でのお問い合わせ内容は、担当者ごとにメモで記録していました。そのため担当者が不在のときは、状況の確認に時間がかかることがありました。依頼書・チャット・管理表・Excel・個人のメモと情報の置き場所がばらばらで、業務全体を見渡せる場所がありませんでした。

導入前:情報がツールごとにばらばらだった

取り組みの進め方(How)

① Google Workspaceで「情報共有の土台」をつくる

まずは2025年秋に、メール・チャット・ファイル保管をGoogle Workspaceに切り替えました。アプリ開発の前に、社内の誰もが同じ場所で情報を共有できる環境を整えるためです。

② 仕事の流れを図にして、解くべき課題を絞る

2025年11月の開始後、N課長に複数回の聞き取りを行いました。問い合わせから受注、工事の手配、引き取りまでの流れを図にまとめ、どこで情報が途切れ、どこで手入力が発生しているかを洗い出しました。

そのうえで、関係者全員にいきなり使っていただくのではなく、社内から社外へ3つの段階で広げる進め方を提案しました。アプリには三者それぞれの画面を用意したうえで、使い始める順番を分けています。

  • 第1段階:まず社内で、工事と引き取りをひとつのアプリで管理する(運用中)
  • 第2段階:倉庫会社さまとも、引き取りの情報をアプリで共有する(運用中)
  • 第3段階:協力工事業者さまにも、工事日の入力や完了報告をアプリで行っていただく(画面は完成済み、これから利用開始)
社内から社外へ広げる3つの段階

メール対応のように、今のツールで問題なく回っている業務はあえて対象外にしました。「今困っていること」に集中するためです。

③ 試作品を「触りながら」中身を決める

アプリに必要な機能を一覧にした資料(要件定義書)の完成を待たずに、2025年12月には一部の機能を形にした試作品(プロトタイプ)をお見せしました。実際の画面を操作していただきながら意見をもらい、機能を詰めていきました。

また、当初は倉庫会社さまと共有している管理表(Airtable)を残したままアプリとつなぐ案でした。しかし打ち合わせを重ねる中で、ツールを増やさない方が運用がシンプルになると判断し、引き取りの情報もGoogleスプレッドシートにまとめる方針に切り替えました。

④ 社内サーバーとクラウドを「自動でつなぐ」

一番の課題は、社内のサーバーにある受注データを、どうやってアプリに取り込むかでした。

サーバーにアプリを直接つなぐ方法もありますが、AppSheetの上位の有料プランが必要になり、社内ネットワークの工事も伴います。そこで、すでに契約していたプランのまま実現できるよう、次の仕組みをつくりました。

  • 社内の連携用パソコンが、基幹システムから必要な受注データだけを自動で取り出す
  • 取り出したデータをGoogleスプレッドシートに自動で書き込む(1日3回自動で実行。急ぎのときはアプリのボタンから手動ですぐに反映することも可能)
  • アプリはスプレッドシートのデータを表示するので、いつでも最新の受注を確認できる
  • 受注から90日を過ぎた古いデータは、毎晩自動で別のシートに移し、アプリの動きを軽く保つ

基幹システムのデータは「読み取るだけで、書き換えない」つくりにしました。今の業務やシステムに影響を与えないためです。

あわせて、データの取り込みや集計などの重い処理は、AppSheetだけに任せず、Google Apps Script(GAS:Google Workspaceに標準で備わっている自動化の仕組み)で自動化しました。アプリ側の負担が減り、画面の表示や操作が軽くなっています。アプリ・データの保管・自動処理まで、クラウド側の仕組みはすべてGoogle Workspaceの機能の中に収まっているため、別のシステムやサーバーを追加で契約する必要もありません。

社内サーバーとクラウドをつなぐ仕組み

⑤ 工事の手配から引き取りまでをひとつのアプリに

完成したアプリでは、基幹システムの受注番号を共通の番号として、次の業務をすべてつなげました。

  • 受注一覧:基幹システムの受注を自動で取り込み、工事や引き取りが必要な案件を手配に回す
  • 工事管理:依頼書のPDFや案件ごとの共有フォルダを自動で作り、協力業者さまへメールやGoogleのチャットで自動通知する
  • 協力業者さま向け画面:自社の担当分だけが表示され、工事日の入力や完了報告(写真・サイン)ができる
  • 引き取り・店入れ管理:工事の情報を引き継いで、引き取りや店入れ(店頭でお渡しする商品を倉庫から本店へ移すこと)の依頼をつくり、倉庫会社さまもアプリで確認する
  • リサイクル券管理:まだ使っていない券だけを選べるようにし、案件と自動でひも付ける
  • 問い合わせ管理:お客様からのお問い合わせを記録し、担当者や対応状況(未着手・進行中・完了)をチームで共有する

工事の情報がそのまま引き取りに引き継がれるので、管理表への入力し直しやリサイクル券の書き写しは不要になりました。データはすべてGoogleスプレッドシートに集まっています。

受注番号でつながる業務アプリの構成

⑥ 「作って終わり」にしない運用・社内対応の支援

2026年4月に社員の皆さまに実際に使っていただく試験運用を行い、6月末にメインの開発を終えました。その後は操作マニュアル(社内用・協力業者さま用)と仕様書を整え、使い方と管理方法の勉強会を行っています。

アプリの手入れは難しさごとにレベル分けし、日常的な設定変更(協力業者さまの追加など)はN課長とIT担当者が社内で対応できるようにしました。専門知識が必要な部分だけサクモフがサポートする体制です。

うまくいった理由:社内の「推進役」と「業務を棚卸し」できたこと

今回のプロジェクトがスムーズに進んだ一番の理由は、ヤサカ電気様の社内体制にあります。インターネット事業部のN課長とIT担当者が中心となって推進役を担い、現場の業務やデータの仕組みを細かく共有してくださいました。

試作品へのフィードバックや社内の要望の取りまとめに加え、社員の皆さまへの使い方の浸透や、現場から出た不明点の集約まで社内で担っていただいたことで、開発と定着を並行して進めることができました。

DXは、AIやITツールを入れるだけでは進みません。AIで何でも自動化できそうに見える時代だからこそ、まず今の業務を棚卸しし、どこをどう変えるのかを自分たちで考えることが欠かせません。そのうえで、現場を知る社内の推進役と、外部の専門家が役割を分担して進めることが、成果につながる大切なポイントです。

導入成果:4つの課題は、こう変わった(After)

特に大きいのは、社内サーバーのデータとクラウドが自動でつながったことです。これで「工事の手配」以外の業務にも、同じ仕組みを広げられるようになりました。

BeforeAfter
工事の進み具合を確かめるのに、FAXとチャットを見比べていた工事の依頼をアプリでまとめて管理。協力業者さまの利用が始まれば、日程や完了報告もその場で確認できる
工事と引き取りの情報を何度も手入力していた受注番号ですべての業務がつながり、工事の情報が引き取り依頼へ自動で引き継がれる。倉庫会社さまともアプリで共有
受注データは社内のパソコンからしか見られなかった1日3回クラウドへ自動で反映し、必要なときは手動ですぐに反映もできる。スマホやタブレットからも受注を確認できる
情報が担当者ごとに分かれていた案件やお問い合わせの情報がアプリに集まり、担当者が不在でも状況を引き継げる

現場からいただいた声

インターネット事業部 N課長

「以前は工事や引き取りの状況を確かめるのに、FAXやチャットをさかのぼって探していました。今は受注から手配まで同じアプリで追えるので、確認の手間がかなり減りました。社内のデータがクラウドにつながったことで、次は協力業者さんにも使ってもらい、チャットでのやり取りを減らしていきたいと思っています」

代表取締役 今井社長

「Google WorkspaceとAppSheetの導入は、当社にとって情報共有のスピードと生産性を上げるために必須でした。サクモフ様のおかげで、きちんと使えるまでサポートもいただき、とても助かりました。中小企業はもともと生産性が低いところが多く、これからの時代に生き残るためには必須だと思います。
それと今回の開発には京都市の補助金を活用したのですが、申請に関してもサポートいただけたのでスムーズに進められました。」

まとめと今後の展望

ヤサカ電気様の課題は、ツールが足りないことではありませんでした。Access、FAX、チャット、管理表、Excel、手書きメモと、ツールごとに情報がばらばらになっていたことが根本の課題でした。

今回の取り組みでは、社内サーバーにあった受注データをクラウドにつなぎ、受注番号を軸に業務をひとつのアプリにまとめました。高額なシステムを新しく入れるのではなく、AppSheet・スプレッドシート・GASといったGoogle Workspaceの機能と今あるシステムだけで実現したのがポイントです。そして何より、N課長とIT担当者を中心とした社内の推進体制があったからこそ、短期間で形にし、現場に定着させることができました。

アプリはすでに完成し、社内と倉庫会社さまで使われています。今後は、用意済みの協力工事業者さま向け画面を使っていただき、チャットやFAXでのやり取りもアプリに置き換えていく予定です(第3段階)。サクモフは引き続き、運用の定着と改善をご支援していきます。


「社内のデータを活かしたい」「ツールがばらばらで情報が追えない」とお悩みの方へ

サクモフは、Google Workspace・AppSheetを活用した中小企業のDX(デジタル化による業務改善)を、業務の整理からアプリ開発、定着まで一貫してご支援しています。

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