【2023年度】第10回公募分の事業再構築補助金のポイントやスケジュールを解説【売上高減少要件の撤廃や新枠】

みなさんこんにちは。

事業再構築補助金については、令和5年度も引き続き継続することが予定されております。
今回は、第10回事業再構築補助金の公募要領の内容についてポイントを絞ってお伝えしたいと思います。

【おさらい】事業再構築補助金とは?

「事業再構築補助金」とは、新型コロナウイルス感染症や物価高騰の影響で、当面の需要や売り上げの回復が期待しづらい中、中小企業等の新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に対して支払われる補助金です。

建物の改装やシステム開発費、機械装置の導入等に用いることが可能です。

応募にあたっての必須要件は下記の通りです。

(1)事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること

●事業者自身で事業再構築指針に沿った事業計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けること。
補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)の確認も受けること。金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで構いません。

(2)付加価値額を向上させること

●補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加させることが必要です。

事業再構築補助金の概要(令和5年4月24日 中小企業庁)

第10回における事業再構築補助金のポイント

第10回公募分の事業再構築補助金については、成長枠や産業構造転換枠などの新枠設立や、グリーン成長枠の拡充など、以前よりも使いやすく、要件が緩和している印象です。

各枠の概要と補助額、補助率、その他特徴を下記にまとめています。
特に黄色マーカー部分は第10回からの変更点ですので、確認しておきましょう。

申請枠概要補助額
(人数は従業員数)
補助率備考
成長枠【新設】
※旧通常枠の位置付け
成長分野への大胆な事業再構築に取り組む中小企業等を支援。20人以下:100万円 ~ 2,000万円
21~50人:100万円 ~ 4,000万円
51~100人:100万円 ~ 5,000万円
101人以上:100万円 ~ 7,000万円
中小 1/2
※大規模な賃上げを行う場合は2/3
中堅 1/3
※大規模な賃上げを行う場合は1/2
・大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ
・中小から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ
グリーン成長枠【拡充】研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援。(エントリー)
・ 中小
20人以下:100万円 ~ 4,000万円
21~50人:100万円 ~ 6,000万円
51人以上:100万円 ~ 8,000万円
・中堅:100万円 ~ 1億円

(スタンダード)
・中小:100万円 ~ 1億円
・中堅:100万円 ~ 1.5億円
中小 1/2
※大規模な賃上げを行う場合は2/3
中堅1/3
※大規模な賃上げを行う場合は1/2
・大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ
・中小から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ

・一定の条件を満たす場合に限り、既に採択されている又は交付決定を受けている事業者においても申請可能
産業構造転換枠【新設】国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業再構築を支援。20人以下:100万円 ~ 2,000万円
21~50人:100万円 ~ 4,000万円
51~100人:100万円 ~ 5,000万円
101人以上:100万円 ~ 7,000万円
中小 2/3
中堅 1/2
廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ
・一定の条件を満たす場合に限り、既に採択されている又は交付決定を受けている事業者においても申請可能
サプライチェーン強靱化枠【新設】海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う事業者5億円中小1/2
中堅1/3
・一定の条件を満たす場合に限り、既に採択されている又は交付決定を受けている事業者においても申請可能
最低賃金枠最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等の事業再構築を支援。5人以下:100万円 ~ 500万円
6~20人:100万円 ~ 1,000万円
21人以上:100万円 ~ 1,500万円
中小 3/4
中堅 2/3
・第9回から変更無し
物価高騰対策・回復再生応援枠【統合】業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む中小企業等、原油価格・物価高騰等の影響を受ける中小企業等の事業再構築を支援。5人以下:100万円~1,000万円
6~20人:100万円~1,500万円
21~50人:100万円~2,000万円
51人~:100万円 ~ 3,000万円
中小 2/3
中堅 1/2

※従業員数によって若干変動
・売上高減少要件が30%から10%に緩和
事業再構築補助金 公募要領(第10回)

成長枠

第10回公募分では、これまでの通常枠が廃止され、成長分野への大胆な転換を図る事業者向けに「成長枠」が新設されます。
これまで事業再構築補助金のハードルとなっていた「売上高減少要件」が撤廃されているため、かなり使い勝手の良い申請枠となっています。
成長枠の特徴は下記のとおりです。

  • 売上高減少要件は不要
  • 市場規模が10%以上拡大する業種・業態への転換のみを支援
    対象となる業種・業態はこちら
  • 事業終了後3~5年で中小・中堅企業から中堅・大企業へ卒業した場合に上限が2倍となる「卒業促進枠」も新たに用意
  • 補助事業期間内に①事業場内最低賃金を年45円以上引き上げ、②給与支給総額を+6%以上引上げた場合に補助率を1/2→2/3に引上げる「大規模賃金引上促進枠」に同時応募可能
    ※「卒業促進枠」と「大規模賃金引上促進枠」はいずれかに同時応募
    ※「大規模賃金引上促進枠」に応募する場合、事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることが出来なかった場合は、差額分(補助率1/6分)の返還を求められるのでご注意
    ※大規模賃金引上促進枠/卒業枠の補助対象経費は、成長枠又はグリーン成長枠の補助対象経費と明確に分ける必要あり

また、応募にあたっては下記の要件を満たす必要があります。

必須要件(付加価値額については、年率平均4.0%以上増加を求める)に加え、以下の①及び②を満たすこと

①取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること

②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

事業再構築補助金の概要(令和5年4月24日 中小企業庁)

グリーン成長枠

第10回公募分からは、グリーン成長枠について、要件を緩和した新類型<エントリー>を創設しています。
グリーン分野での事業再構築を目指す事業者にとってより使いやすい申請枠となりました。
グリーン成長枠の特徴は、下記のとおりです。

  • 研究開発、技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取り組みを支援
  • 研究開発等の要件を2→1年に短縮等した「エントリークラス」を新設し、裾野拡大
  • 事業終了後3~5年で中小・中堅企業から中堅・大企業へ卒業した場合に上限が2倍となる「卒業促進枠」も新たに用意
  • 補助事業期間内に①事業場内最低賃金を年45円以上引き上げ、②給与支給総額を+6%以上引上げた場合に補助率を1/2→2/3に引上げる「大規模賃金引上促進枠」に同時応募可能
    ※「卒業促進枠」と「大規模賃金引上促進枠」はいずれかに同時応募
    ※「大規模賃金引上促進枠」に応募する場合、事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることが出来なかった場合は、差額分(補助率1/6分)の返還を求められるのでご注意
    ※大規模賃金引上促進枠/卒業枠の補助対象経費は、成長枠又はグリーン成長枠の補助対象経費と明確に分ける必要あり
  • 一定の条件下で再申請・再採択が可能(2回まで)

なお、エントリーとスタンダードの主な違いは下記の通りです。

また、応募にあたっては下記の要件を満たす必要があります。

必須要件(付加価値額については、年率平均4.0%以上増加を求める)に加え、以下の①及び②を満たすこと

①グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発又は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成(※)をあわせて行うこと
(※)外部研修又は専門家を招いたOJT研修を受けることが必要となります。

②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

事業再構築補助金の概要(令和5年4月24日 中小企業庁)

産業構造転換枠

市場規模が縮小する業種・業態からの転換を支援する特別枠「産業構造転換枠」を創設します。
対象経費に廃業費を追加し、廃業費がある場合は補助上限額を上乗せするなど、より転換を意識した申請枠ですね。
特徴は下記の通りです。

  • 市場規模が10%以上縮小する業種・業態からの転換を支援を支援
  • 廃業費がある場合、上限を2,000万円上乗せ
  • 一定の条件下で再申請・再採択が可能(2回まで)

また、応募にあたっては下記の要件を満たす必要があります。

必須要件(付加価値額については、年率平均3.0%以上増加を求める)に加え、以下の①または②を満たすこと

①現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること

②地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること。

事業再構築補助金の概要(令和5年4月24日 中小企業庁)

※①について、縮小事業であると指定されている業種・業態もありますので、まずは、リストを確認してみましょう。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/tenkanwaku_list.pdf
リストにない場合でも、今後10年間で市場規模が10%以上縮小を応募時に客観的な統計等で示し、事務局審査で認められれば対象となるようです。
なお、今後過去の公募回で認められた業種・業態については、その後の公募回では指定業種として公表されるとされています。

※②については、要件を満たす地域であれば下記に掲載されています。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/tenkantiiki_list.pdf

サプライチェーン強靭化枠

第10回公募分以降は、海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に取り組む事業者を対象として「サプライチェーン強靱化枠」が新設され、補助上限額最大5億円までの支援が決定されています。
主な特徴は下記の通りです。

  • 海外から国内への回帰等を促進するため、補助上限5億円(建物を含まない場合は3億円)を支援
  • 一定の条件下で再申請・再採択が可能(2回まで)

また、応募にあたっては下記の要件を満たす必要があります。

必須要件(付加価値額については、年率平均5.0%以上増加を求める。)に加え、以下の要件を満たす、生産拠点を国内回帰する(※1)事業であること

①取引先から国内での生産(増産)要請があること(事業完了後、具体的な商談が進む予定があるもの)

②取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態(※2)に属していること

(※2)対象となる業種・業態は、事務局で指定します。(随時更新予定)https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/seichowaku_list.pdf

また、指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態である旨データを提出し、認められた場合には、対象となり得ます。(過去の公募回で認められた業種・業態については、その後の公募回では指定業種として公表します。)

③下記の要件をいずれも満たしていること

⑴経済産業省が公開するDX推進指標を活用し、自己診断を実施し、結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること。

⑵IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★★二つ星」の宣言を行っていること。

④下記の要件をいずれも満たしていること

⑴交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと。

⑵事業終了後、事業年度から3~5 年の事業計画期間終了までの間に給与支給総額を年率平均2%以上増加させる取組であること⑤「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表していること。

事業再構築補助金の概要(令和5年4月24日 中小企業庁)

要件が他の申請枠と比較してかなり多く、煩雑です。
申請の際は、ひとつずつ丁寧につぶしていくようにしましょう。

最低賃金枠

第9回までと同じく、最低賃金の引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等を対象とした「最低賃金枠」が設けられています。主な特徴は下記の通りです。

  • 「最低賃金枠」は、加点措置を行い、物価高騰対策・回復再生応援枠に比べて採択率において優遇

応募にあたっては下記の要件を満たす必要があります。

必須要件(付加価値額については、年率平均3.0%以上増加を求める)に加え、以下の①及び②を満たすこと

①2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること

②2021年10月から2022年8月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること

事業再構築補助金の概要(令和5年4月24日 中小企業庁)

物価高騰対策・回復再生応援枠

コロナや物価高などの影響で、業況が厳しい事業者については、引き続き支援が続けられます。
第10回からは、回復・再生応援枠と緊急対策枠が「物価高騰対策・回復再生応援枠」としてまとめられます
主な特徴は下記の通りです。

  • 第9回公募までの、回復・再生応援枠と緊急対策枠を統合

なお、応募の要件は下記の通りです。

必須要件(付加価値額については、年率平均3.0%以上増加を求める)に加え、以下の①または②を満たすこと

①2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること
※売上高減少要件については、付加価値額(売上高×1.5)減少で代替可能

②中小企業活性化協議会から支援を受け、再生計画等を策定していること

事業再構築補助金の概要(令和5年4月24日 中小企業庁)

シンプルに売上高(または付加価値額)が下がっているのであれば、応募要件の①を満たせる可能性が高いです。

第10回公募分のスケジュール

事業再構築第10回公募分のスケジュールは下記のとおりです。

  • 公募開始:令和5年3月30日(木)
  • 申請受付:調整中
  • 応募締切:令和5年6月30日(金)18:00
  • 採択発表:令和5年8月下旬~9月上旬頃(予定)

また、情報更新され次第、当ブログにてお知らせしていきます!

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は、事業再構築補助金の変更点についてポイントを絞って解説しました。

公募にあたっては今回の内容を頭に入れた上で直近の公募要領を読み込むことが重要です。

事業再構築補助金はその名のとおり事業拡大・再構築の大きなチャンスですので、ぜひともチャレンジを検討してみてくださいね!

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