【事例】50以上のAccessテーブルを3つのAppSheetアプリに集約!「担当者不在で業務停止」の危機を乗り越えた和菓子メーカー「京菓苑 花ゆう」様のDX

こんにちは。中小企業のDX・業務改善を支援している株式会社サクモフです。

「社内に古いAccessやExcelが溢れていて、もはや誰も全容がわからない…」
「あの人が辞めたら、うちの会社の業務は止まってしまうのでは…」

多くの中小企業が抱える「システムのブラックボックス化」と「強烈な属人化」。
京都で長年、四季折々の京菓子を製造・卸売する「京菓苑 花ゆう」様も、まさにこの壁に直面していました。

Google Workspace導入支援の様子(左:花ゆう 小島社長、右:サクモフ 共同代表 諸隈)

本記事では、熟練担当者の退職が迫る中、「30年前から変わらないやり方」から脱却し、AppSheet(ノーコード開発ツール)によるシステム統合とLooker Studio(分析・可視化ツール)による経営可視化を果たした「花ゆう」様のDXプロジェクトの裏側をご紹介します。

当社ではGoogleを活用したDX支援サービスを提供しています。
無料相談も受け付けておりますので、興味のある方は気軽にお問い合わせください。

お客様紹介:京菓苑株式会社花ゆう 様

京都市右京区に本社を構え、昭和33年の創業以来、京菓子や歳時菓子の製造・販売を手掛ける京菓苑株式会社花ゆう様。老舗和菓子店や専門店を主な取引先とし、長年にわたり日本の伝統文化を支えてこられました。

お雛様、節分、お盆、クリスマスなど、行事に合わせた季節商品やPB(プライベート商品)の、きめ細やかな加工展開を得意とされています。こうした「季節ごとに商品が入れ替わる」ビジネスは、そのぶん材料計算や在庫管理が複雑になりやすい、という難しさも抱えていました。

京菓苑株式会社花ゆう様で製造された京菓子

経営者の悩みと、現場が直面していた危機(Before)

プロジェクト開始当初、花ゆう様は深刻な課題を抱えていました。小島社長は当時の状況をこう語ります。

「昭和50年からほとんど変わらないアナログなやり方で業務が回っていました。長年会社を支えてくれた総務部長がもうすぐ退職するのですが、彼が作ったシステムがブラックボックス化していて、このままでは誰も引き継げないという危機感がありました」

ヒアリングを深めるにつれ、具体的な課題は、以下の4点に集約されていきました。

大元のデータ(マスタ)がバラバラに散らばっていた

まず土台となる「マスタ」——商品名・単価・在庫といった、業務のあらゆる場面で参照される“大元のデータ”が、あちこちに散らばっていました。機能や行事ごとにAccessのファイルが乱立し、その中で50以上の表(テーブル)が複雑に連携し合っている状態です。

特に深刻だったのは、同じ「商品マスタ」が複数のファイルにコピーされ、バラバラに存在していたこと。しかもその同期は、自動処理(マクロ)を担当者が手作業で走らせて行っていました。結果として、「どれが最新で正しい商品データなのか」が、すぐには誰にも分からない状態に陥っていたのです。

強烈な属人化による「業務停止」のリスク

複雑な「季節商品の材料計算」のロジックや、「どのタイミングでどの自動処理を走らせるか」といった運用のノウハウは、すべて総務部長の頭の中だけにありました。マニュアルもなく、他の人には再現できません。

退職が半年後に迫る中、この状態のまま引き継ぐのはほぼ不可能。放置すれば、担当者の退職とともに基幹業務そのものが止まりかねない——それが最大のリスクでした。

紙と口頭による情報伝達の限界

製造・加工現場への指示書や、パートスタッフからの実績報告(日報)は、すべて紙でやり取りされていました。それを総務が改めてシステムに手入力し直すため、同じ情報を二度扱う“二重手間”が発生。

リアルタイムな在庫状況や生産の進み具合を把握することが困難でした。

売上・仕入れデータの分析不足

基幹システムにデータ自体はあるものの、「どの商品が売れ筋か」「どの取引先が伸びているか」といった分析をタイムリーに行えず、経営判断はどうしても“勘と経験”に頼りがちでした。

サクモフの解決策・アプローチ(How)

私たちは、単に古いシステムを新しいツールに載せ替えるのではなく、業務の根幹から見直し、データの持ち方そのものを作り直す伴走支援を行いました。

進め方は、大きく次の順序です。

徹底した業務フローの解読と棚卸し

まずは綿密な現場ヒアリングを実施し、複雑に絡み合ったAccess内の表(テーブル)構造と、手作業のフローを一つずつ解読していきました。現場が「何を入力し、どんな帳票を出しているのか」をフロー図に描き起こし、「本当に必要なデータと機能」「もう使っていないデータ」を明確に仕分けます。

地道な作業ですが、ここで全体の“見取り図”ができて初めて、次の「データの作り直し」に安心して踏み込めます。

絡み合った業務フロー・データの徹底的な「解読と棚卸し」

「唯一無二の統合マスタ」の再構築(プロジェクト最大の鍵)

ここが今回のプロジェクトで最大の勘どころです。

前述のとおり、花ゆう様では“大元のデータ”(マスタ)が複数のファイルにコピーされて散らばり、どれが正しいのか分からなくなっていました。そこで私たちは、正しいデータが必ず1か所に集まる仕組み——「唯一無二の統合マスタ」を、Googleスプレッドシート上に作り直しました。ポイントは次の2つです。

  • 基幹システムを“正”として、安全につなぐ
    既存の基幹システム(SQL Server)を「正しいデータの大元」と位置づけ、そこから毎日自動でデータをコピーします。データは一方向にだけ流れるため、アプリ側での操作が基幹システムを壊す心配がありません。既存の資産を活かしながら、安全に移行できる設計です。
  • 花ゆう様ならではのデータを一つに束ねる
    この同期データに、これまでAccessで個別管理していた「レシピ(材料の組み合わせ)」「季節区分」「加工賃」といった独自情報を組み合わせ、AppSheet上で1つのマスタに統合しました。これにより、「どれが最新か分からない」という長年の悩みを根本から解消しています。

この“唯一無二のマスタ”が土台になったことで、ようやく現場が毎日使うアプリづくりへと進めます。

基幹システムを正としつつ、Accessの独自データを統合した唯一無二のマスタ

現場目線のAppSheetアプリ開発(3つの統合アプリ)

再構築した統合マスタを土台に、実務にそのまま乗る3つのAppSheetアプリを開発しました。

  1. 生産・材料管理アプリ
    季節商品の生産計画から、必要な材料の自動計算、過不足の可視化までを一元化。紙の指示書を廃止し、タブレットでの確認・管理に切り替えました。
  2. 日報・加工賃管理アプリ
    パートスタッフや現場担当者が、スマホ・タブレットからボタン操作で直接日報を入力。これまで「紙に書く→総務がシステムに打ち直す」の二段構えだった作業が、その場の入力だけで完結するようになりました。入力内容は生産進捗にリアルタイムで反映され、給与計算とも連動します。
  3. 営業企画アプリ
    営業担当者が、常に最新のマスタ情報をもとに、顧客ごとの商品リストやパンフレットをその場で出力できるようになりました。
現場目線で開発した「3つの統合アプリ」

現場からの入力が自然に集まる仕組みができれば、あとはその数字を経営に活かすだけです。

Looker Studioによる「販売集計ダッシュボード」の構築

基幹システムから同期された受注・販売データを取り込み、Looker Studioで“見える化”しました。単なるグラフ化ではなく、経営判断に直結する切り口でまとめています。

  • 売れ筋商品分析
    「どの季節に、どの商品が、どれだけ売れているか」が一目で分かり、次の仕込み量を決める材料になります。
  • 得意先別売上分析
    「どの取引先が伸びていて、どこが落ちているか」が見え、営業の優先順位づけに役立ちます。
  • 担当営業別分析
    担当者ごとの実績が可視化され、声かけや目標設定の根拠になります。

これにより、これまでの「勘と経験」から、「データに基づいた経営判断」へのシフトを後押ししました。

ただし、どれだけ良い仕組みも、現場で使われなければ意味がありません。最後の仕上げが、この“定着”のフェーズです。

Lookerstudioによるダッシュボードで「経営の可視化」

「作って終わり」にしない、現場に寄り添うハンズオン定着支援

システムを開発するだけでなく、それが現場で「当たり前に使われる道具」になるまでの運用定着を徹底的にサポートしました。

  • ITの基礎からレクチャー:Googleアカウントのログイン方法やChromeブラウザの設定など、初歩的なITインフラの整備から丁寧にハンズオンでレクチャーを実施しました。
  • 現場目線の伴走サポート:「昭和50年のやり方」に慣れ親しんだ現場スタッフが不安なく移行できるよう、実際の業務フローに沿ったアプリの操作方法を直接指導。現場の声を拾い上げながら、システムの微調整をアジャイルに繰り返しました。
実際に自身のノートPCでアプリを触る小島社長

こうして、「システムを入れたけれど現場で使われない」というDXにありがちな失敗を防ぎ、スムーズな運用移行を実現しました。

導入成果::4つの課題は、こう変わった(After)

半年がかりのプロジェクトを経て、花ゆう様の現場と経営は次のように変わりました。
冒頭の4つの課題と、そのまま対になっています。

  • 業務停止リスク → 無事に引き継げる状態へ
    属人的で複雑なAccess操作が不要になり、直感的なアプリ画面に置き換わったことで、退職を控えた総務部長から新任担当者へ、無理なく業務を引き継げる目処が立ちました。プロジェクト最大のゴールだった「業務を止めない」を達成しています。
  • データの散らばり → 常に1か所に“正しいデータ”
    正しいデータが必ず1か所に集まる状態になり、「どれが最新か分からない」という日々の確認作業そのものがなくなりました。
  • 二重手間 → ペーパーレスと二重入力ゼロ
    手書き日報からアプリへの直接入力に移行し、事務作業の手間と、紙をシステムに打ち直すまでのタイムラグが解消しました。
  • 勘と経験 → データに基づく判断+欠品リスクの低減
    :Looker Studioで数字を見ながら判断できるようになったほか、材料計算と在庫管理の連動で、二重発注や欠品のリスクが大幅に低下。欠品による特急手配といった“隠れコスト”の削減にもつながっています。

現場からいただいた声

小島社長

江戸時代から急に令和になったみたいですね(笑)

これまでの手作業や紙の山から解放され、新任の担当者へも自信を持って業務を引き継げる目処が立ちました。

何よりLooker Studioで売れ筋や得意先別の数値がひと目でわかるようになり、感覚ではなくデータに基づいた経営判断ができるようになったのが大きいです。

現場担当者

紙で書いて、またパソコンに入力し直す二度手間がなくなりました!
スマホやタブレットでボタンを押すだけで日報が登録できたり、今どの材料が足りていないかがその場でパッと確認できるので、現場の作業が本当にスムーズになりました

まとめと今後の展望

レガシーシステム(老朽化した既存システム)からの脱却やDX推進において、最も重要なのは「今のやり方(手段)」をそのまま新しいツールに移し替えることではありません。「徹底した現場業務の理解」「正しいデータ構造の再設計」、そして「現場が喜んで使ってくれるまでの教育・定着支援」——この3つが揃って初めて、真の業務改善が実現します。

花ゆう様は今後、蓄積された製造・販売データをさらに活用し、需要予測に基づく効率的な生産体制の構築など、次なるステップへの進化を見据えられています。

お使いのシステム、ブラックボックス化していませんか?

  • 「社内に古いAccessやExcelが溢れていて、全体像が誰にもわからない…」
  • 「特定の担当者が辞めたら、業務が止まってしまう危機感がある…」
  • 「システムを入れても、現場が使いこなせるか不安…」

このようなお悩みを抱える企業様へ。サクモフでは、徹底した現場ヒアリングから定着支援まで伴走し、貴社に最適なDXの形をご提案します。ぜひお気軽にご相談ください。

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