【加工業DX】AppSheet×Lookerstudioで中小金属加工業の在庫管理や入出庫管理・品質チェック業務を一元化！【業務アプリ・ダッシュボードをノーコード開発】

こんにちは。本記事では、中小金属加工業のDX事例をご紹介します。

中小企業や小規模事業者にとって日々の業務を効率化したり、デジタル化（DX化）することは、利益を確保するためにはもちろん、時間やマンパワーの節約という点でも非常に重要です。

当社は普段、中小企業を対象に、業務効率化やDXを支援するコンサルティングサービスを提供しています。
中でも直近ではAppsheetやLookerstudioといったノーコードツールを活用して支援することが多くなってきています。

今回取り上げるのは、製品の入出庫管理や在庫管理の効率化に成功した中小金属加工業者の事例です。この事例では、紙やエクセルを使った従来の業務フローを見直し、ノーコードツールを活用しながら業務をデジタルで一元管理するシステムを構築しました。

加工業者の方は勿論、大規模なシステム開発に頼ることなくDXや業務効率化をしたいと考えている中小企業の皆様の参考になれば幸いです。

また、当社ではAppsheetやLookerstudioを含むGoogleサービスの活用サポートを提供しています。
無料相談から受け付けておりますので、本記事でノーコードによるDXに興味を持ったという方は気軽にお問い合わせください。

AppSheetとは？

AppSheetは、プログラミング不要で業務アプリを作成できるノーコードツールです。

Google Cloudのサービスの一つであるため、Google カレンダーやスプレッドシートなどとの連携もスムーズに行えます。アイデアとデータが揃えば、誰でもマウス操作だけで、オリジナルのアプリをつくることができます。

Appsheetでできることは下記のように、ノンプログラマーでもアプリ開発をできる機能が充実しています。

• プログラミング不要で業務アプリを作成可能
• 業務プロセスの自動化
• パソコン、モバイル、タブレットに対応
• 関数を使って細かな設計も可能
• Google Workspaceやクラウドサービスとの連携

LookerStudioとは？

Looker Studio（ルッカースタジオ）は、Google Cloudが提供するデータの可視化ツールで、社内データやWeb解析データを使って、視覚的にわかりやすい経営ダッシュボードを作成できます。

しかも基本的には無料で利用できるため、まさに中小企業にとってはデータドリブン経営の救世主となるツールと言えます。また、クラウド型のツールであるため、インターネットがあればどこからでもアクセスでき、従業員全員が同じデータを同時に確認することができます。

今回開発の概要

この事例でご支援したのは、従業員50名ほどの中小金属加工業者でした。同社では、加工後の製品の品質チェックや入出庫・在庫管理にエクセルや紙媒体を使用しており、いくつかの課題が顕在化していました。

金属加工の業務における課題感

まず、製品チェックや在庫管理は紙やエクセルで記録されており、同じ情報を何度も転記する必要がありました。そのため、手間や時間がかかり、ミスも発生しやすい状況でした。

エクセルシートも100を超えるシートやファイルに分散しており、情報の集約や分析が困難でした。また、前任が組んだ複雑な関数やマクロをそのまま流用していたため、更新のたびに複雑な操作が必要で、現場では扱いづらい状態でした。

今回解決のポイント

これらの課題を解決するために、当社ではAppSheetを活用した業務アプリの開発と、Looker Studioを使ったデータの可視化に取り組みました。

まず、紙やエクセルに分散していた情報をGoogleスプレッドシートに集約しました。
その上で、AppSheetを用いて品質チェックや入出庫管理を簡単に行える入力アプリを構築しました。
このアプリにより、データ入力時の手間やタイムラグが解消され、全ての情報がリアルタイムで更新される仕組みが整いました。

さらに、Looker Studioを活用して、在庫や入出庫データをビジュアル化し、経営者や現場のスタッフが、タイムリーに必要なデータを確認できるダッシュボードを作成しました。
これにより、これまで手作業で行っていた集計やグラフ作成の手間が削減され、データに基づいた迅速な意思決定が可能となりました。

Appsheetで開発した金属加工業向け「入力アプリ」の概要

この章では、赤枠部分のAppsheetで作成した「入力アプリ」を解説します。

入力アプリでできること・画面構成

今回AppSheetで開発した入力アプリは、主に製品の品質チェックと入出庫登録を一元管理するためのものです。

加工後の製品については、品質をチェックし、問題のない製品は在庫として登録します。一方、問題のある製品はその場で廃棄数として記録されます。また、製品の出庫作業についても、アプリ上で簡単に登録できるように設計しました。

このアプリでは、記録されたデータが全てGoogleスプレッドシートに自動で反映される仕組みになっているため、常にデータの整合性が保たれ、経営判断に必要なデータが最新の状態で蓄積できるようになりました。

【入力アプリの機能一覧】

1. 製品チェック登録機能
   • 加工後の製品の品質を項目チェック
   • 問題のない製品は入庫し、在庫として登録
   • 問題のあった製品は、該当数を廃棄として登録
   • 一度のチェックで複数製品を登録可能
   • 担当者や日付、チェック時間を記録可能
2. 出庫登録機能
   • 在庫のある製品から、任意の数量だけ出庫登録
   • 日付と担当者を記録可能
3. 簡易集計機能
   • ❶❷の記録・登録を表形式で簡易集計
     （本システムでは、LookerStudioによる集計・可視化をメインとしているため、詳細説明は省略）

スプレッドシートの構成

今回の事例では、シート数で言うと数百におよぶエクセルファイルを下記４つのスプレッドシートにまで落とし込みました。（中小企業にとっては、開発よりも何よりも、散らかったデータの整理が鬼門かもしれませんね…）

各シートの簡単なデータの流れと関係性も併せて示します。
なお、AppsheetとLookerstudio上にのみ表示される仮想カラム（カラム同士の値などにより自動計算されるカラム）はスプレッドシート上には表示されていません。

LookerStudioで開発した金属加工業向け「在庫・入出庫ダッシュボード」の概要

この章では、赤枠部分のLooker Studioで作成した「在庫・入出庫ダッシュボード」を解説します。

このダッシュボードでは、「入力アプリ」で入力されたデータを基に、年別・月別・日別の入出庫数や在庫数の推移を視覚的に確認できます。
また、製品ごとの最新在庫数や、特定の期間の入出庫履歴を簡単に分析できる仕組みも実装しました。

以下がダッシュボードの全体像です。

さらに、Looker Studioの強みであるインタラクティブな操作性を活かし、期間や製品ごとにデータを絞り込んで詳細な分析を行えるようになりました。

下記より各エリアの詳細をご紹介します。

構成詳細：入出庫・在庫集計レポート

月別・日別・製品別に、入出庫や廃棄数、在庫数の推移を確認できるレポートです。

月別 入出庫・在庫・廃棄数

各月の入出庫数や廃棄数、在庫数を時系列グラフで表示するエリアです。

まずはこれを見ることで、今月の入出庫数がこれまでに比べて良かったのか悪かったのか、前年と比較しておかしな数値になっていないかを確認し、議論の大まかな方向性を決めます。

製品別×月日別入出庫・廃棄数

製品×期間のクロス集計をヒートマップ化し、入出庫数や廃棄数の分布を一目で確認できます。

日単位にブレイクダウンした数値も確認できるため、変化の要因分析にも使えそうですね。

製品別 最新在庫数・入出庫履歴

製品別の最新在庫数および入出庫履歴を時系列で確認できます。

構成詳細：製品チェック履歴レポート

加工後の製品チェック状況を確認できるレポートです。
左側の表が、チェック時の基本項目（日付・担当者・時刻）です。
右側の表が製品ごとの詳細項目（製品図番、品質項目、入庫数量、廃棄数）です。1回のチェックで複数の製品を登録できる仕様にしています。

便利な機能

作成したダッシュボードは、LookerStudioならではの利便性があります。

インタラクティブな絞り込み操作

今回、Lookerstudioでレポートを作成したことで、月単位や日単位など、期間の表示単位を切り替えたり、特定の製品の入出庫履歴を絞り込んで確認したりするなど、リアルタイムに詳細な分析ができるようになりました。

共有のしやすさ

Lookerstudioで作成したダッシュボードやレポートは、URLでの共有や権限設定が簡単。PDF形式で出力することも可能です。
経営会議の際だけでなく、従業員がいつも見ているipadやPCにレポートを飛ばして、立ち話ついでに在庫や入出庫分析をすることも可能となりました。

まとめ

実際に開発・運用した感想

今回の事例では、AppSheetとLooker Studioを組み合わせることで、金属加工における製品加工後の業務を大幅に効率化することができました。

特に、これまで紙やエクセルで分散して管理されていたデータを一元化し、入力された情報がリアルタイムで更新される仕組みを整えたことで、業務全体の見通しが良くなりました。

例えば、入庫や出庫の履歴が即座に反映されるため、「今在庫がどれくらいあるのか」「どの製品が多く廃棄されているのか」といった重要な指標をタイムリーに把握できるようになり、経営判断のスピードが格段に向上しました。

また、AppSheetとLooker Studioというノーコードツールを採用したことで、大規模なシステム開発や高額なサブスクを導入することなく、コストを抑えながら現場のニーズに柔軟に対応したシステムを構築することができました。

現場の作業員からは「入力が簡単で分かりやすい」、管理者からは、「在庫や入出庫データがすぐに見られるので安心」という声も寄せられ、現場と経営の双方で使いやすい仕組みになったと感じています。

今後の展望

今後はユーザーごとのログイン機能を追加する予定です。

この機能により、担当者ごとに必要な画面だけが表示されるようになり、作業のさらなる効率化や内部統制の強化が期待できます。

中小企業こそ、ノーコードでDXを実現しよう！

プログラミング不要で業務アプリを開発できるAppSheetと、データの可視化に優れたLooker Studio。

この2つのツールを活用することで、中小企業でも手軽にDXを実現することができます。

当社では、こうしたノーコードツールの導入支援を行っていますので、興味のある方はお気軽にお問い合わせください。