【経営管理】中小企業がこれだけはやるべき!シンプルな予実管理とKPI設定手法
中小企業の経営者にとって、経営の「見える化」は重要な課題です。
特にKPI(重要業績評価指標)や予実管理を活用することで、経営の現状を把握し、適切な意思決定を行うことが可能です。
ただ、なかなか「KPIって何?」「予実管理って難しそう…」という方も多いと思います。
本記事では、これまでKPIの設定や予実管理をできていなかった中小企業の経営者の方でも明日から取り組める、シンプルかつ実践的な手法を解説します。
ちなみに当社でも経営管理が貴社の経営管理を社内に入り込んで代行するサービスを提供していますので、興味があれば気軽にお問い合わせくださいね。
目次
KPIとは?KGIとの違いを簡単解説
KGIとは
まず、KGI(Key Goal Indicator)は、企業の最終的な目標(経営目標)のことです。
「経営目標達成指標」とも訳されます。
その会社の経営戦略や事業戦略を達成するために、何をもって成果(ゴール)とみなすのかを定量的に定めた指標を指します。
例えば、売上や粗利、営業利益、キャッシュフローなどをKGIに据えている会社が多いと思います。
- 売上目標:5,000万円
- 利益目標(粗利):2,000万円
- キャッシュフロー:500万円
KPIとは
KPI(Key Performance Indicator)とはKGIを達成するため、その進捗を定量的に図る指標のことです。
また、KGI達成のために必要な具体的アクションへつながるものでもあります。
例えば、各KGI(経営目標)に対しては、下記のようなKPIを設定する場合があります。
- KGI:売上目標:5,000万円
- KPI:提案数 XX回
- KPI:既存顧客のリピート率 XX%
- KPI:既存顧客の購入単価 XX万円
- 利益目標(粗利):2,000万円
- KPI: 仕入れ単価:XX万円
- KPI: 仕入れ回数:XX万円
KPI設定のポイント
KPI設定にはポイントがあります。
一つはKPIツリーを作成すること、もう一つは「SMART法則」に沿った指標を設定することです。
どちらもそう難しくはないので、簡単に解説します。
KPI設定のポイント①:KPIツリーの作成
KPIの設定とは、KGI(最終目標)を分解し、具体的なアクションにつながるような指標に落とし込むことです。
また、一般的に目標を達成するための手段は一つではないように、KGIについても同じことが言えます。
つまり、一つのKGIに対してKPIやアクションが複数存在する場合も多く、体系的に整理する必要があります。
そこで有効なのがKPIツリーを使う方法です。
KPIツリーとは
KPIツリーとは、KGIを頂点とし、それを達成するために必要な要素やアクションを分解し、階層的に整理した図のことです。
これにより、KPIをぱっと見で見渡すことができ、アクションの抜け漏れや重複を防ぐことができます。また、目標達成に向けた道筋がより明確になり、社内で共有しやすくなります。
例えば、KGIを売上目標として据えた場合は、下記のようなKPIツリーが考えられます。
分解のポイント
注意したいのは、KPIはアクションに直接つながる指標まで分解する必要がある点です。
例えば、「売上増加」というKGIを設定した場合、売上を「受注数×受注単価」に分解するのは一歩前進ですが、このままでは不十分です。
「受注数」という指標を増やすために必要な具体的な行動が曖昧で、実際のアクションに落とし込みにくいからです。
そこで、「受注数」をさらに「提案数」と「受注率」に分解します。
この段階になると、「提案数を増やすために架電数を増やす」といった具体的なアクションがイメージしやすくなります。
KPI設定のポイント②:SMARTの法則に沿った指標設定
KPI設定の際に、「何をKPIにすべきか分からない」「設定したKPIが行動に結びつかない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで、KPI設定時に活用できる「SMARTの法則」を解説します。
SMARTとは、目標を立てる時に使える法則のことで、Specific(具体的であること)、Measurable(測定可能であること)、 Achievable(達成可能であること)、Relevant(関連性があること)、Time-bound(期限が明確であること)の頭文字をとったものです。
Specific(具体的であること)、Measurable(測定可能であること)
KPIは具体的で明確に定義し、その進捗を数値で追えるものにしましょう。
例:「月間アクセス数100万を達成」「新規顧客を10社獲得」など、誰が見ても内容が明確で、定量的な目標を設定します。
例えば「受注率」のように割合で表される指標は、その後の行動に結びつけるのが難しく、定量的に測定しづらいため、KPIとしてはふさわしくない場合があります。
しかし、具体的なアクションとして、次のような施策を設定することで、効果的な目標に変えることが可能です:
- 顧客満足度を向上させるため、応対時間を延ばす
- 営業スキルを向上させるため、研修回数を増やす
このように、定量的な行動指標として落とし込むことで、社内的な合意が得られやすくなります。
Achievable(達成可能であること)
KPIは現実的で、達成可能な範囲内に設定することが重要です。
例えば、過去の実績や現在のリソースを考慮し、「今期売上を10%増加させる」など無理のない目標を設定します。
Relevant(関連性があること)
KPIは、会社や事業の目的や方向性と一致している必要があります。
例えば、KGIが売上目標の場合、「新規顧客の獲得」や「既存顧客のリピート増加」は目標に直結した指標となります。
一方、「従業員満足度の向上」などは直接的には売上に寄与しないものであるため、この場合はKPIにはふさわしくありません。
Time-bound(期限が明確であること)
目標の達成期限を明確にします。
例えば、「3カ月以内に実施」「四半期ごとにレビュー」など、具体的なスケジュールを設定します。
予実管理とは?
KGI、KPIを設定したら、予実管理を行いましょう。
予実管理とは、予算(計画)と実績(結果)を比較して、その差異を分析することです。
これにより、経営状態をリアルタイムで把握し、迅速な意思決定や改善策の立案が可能となります。
シンプルな予実管理の手順
予実管理は、PDCAサイクルを使うことで簡単に実践できます。
PLAN: 目標の設定とKPIの明確化
予実管理の第一歩は、KGI(最終目標)とそれに紐づくKPI(重要業績評価指標)を設定することです。
※KGIとKPIの設定については、上記で解説したため、詳細は割愛します。
設定したKGI・KPIの進捗状況を定期的に確認し、現状と目標のギャップを把握することが次のアクションへの基盤となります。
DO: 実施とデータ収集
設定したKPIを達成するために、日々の業務を遂行しながら、関連データを収集します。
たとえば、営業部門では提案数を記録し、顧客対応部門では問合せ対応数をトラッキングします。
この段階では、スプレッドシートやCRM(顧客関係管理ツール)、会計ソフトなどを活用して、データを集約しやすい仕組みを整えることがポイントです。
CHECK: 進捗確認と差異の分析
月次の定例会議やレビューを通じて、KGIとKPIの進捗状況を確認します。
たとえば、「売上目標が未達成の場合、提案数や問合せ対応数が目標に達していないか」を分析します。
さらに、それぞれの差異の原因を明らかにするために、社内で以下のような深掘りを行います。
- 「なぜ提案数が低かったのか?」
- 「問合せ対応が目標値に達しなかった理由は何か?」
これにより、たとえば以下のような課題を特定できます。
- 営業マンが事務作業に追われ、提案作業の時間を確保できなかった。
- クレーム対応に熟練社員が拘束され、問合せ対応が滞った。
ACTION: 改善施策の実行
差異の原因が特定されたら、それを解決する具体的な改善施策を迅速に実行します。
例えば、検討の結果、下記のような改善施策が出てくるかもしれません。
- 営業関連の事務作業やクレーム対応を外部委託する。
- 閑散期のスタッフを営業支援に一時的に配置する。
これらの施策を実行し、目標に向けての進捗を取り戻します。
施策の効果を次のサイクルで検証しながら、PDCAを繰り返すことで予実管理を洗練させましょう。
予実管理を成功させるためのコツ
1. まずはデータの集約と可視化を徹底する
せっかく定量的で効果的なKPIを設定しても、それを日々追っていくことができなければ意味がありません。
そのためには、「必要なデータが蓄積している状態」「誰もがいつでも必要なデータにアクセスできる状態」を整備しておくことが重要です。
たとえば、こんな状況に心当たりはありませんか?
- 経営会議用の資料を毎回転記や手入力で作成している。
- スプレッドシートが散らかり、関数が壊れている。
- 営業社員が個別に顧客リストを管理していて統一されていない。
- フォルダやファイル名のルールが曖昧で、最新版のデータが見つからない。
もし一つでも当てはまる場合は、まず社内のデータ整理から取り組むべきです。
ファイルやフォルダの作成・保管ルールを見直すことで、誰もが必要な資料やファイルをすぐに活用できる環境を整えましょう。
次に、各種データを連携させて一箇所に集約し、それをグラフや表などで分かりやすく可視化するステップに進みます。
たとえば、Looker Studioのような経営ダッシュボードを活用すれば、複数のデータソースを統合し、KPIをリアルタイムで自動更新することが可能です。また、データを視覚的に加工できるため、関係者に分かりやすく情報を共有できます。これにより、定例会議の効率が向上し、意思決定のスピードアップや正確性の向上にもつながります。
データの集約と可視化は、現状を把握し、適切なアクションを取るための土台となります。
まずは社内の情報管理の現状を確認し、改善に向けた具体的な手を打っていきましょう。
2. KPIは必要最低限の項目に絞り、見直し続ける
KPI(重要業績評価指標)は、目標達成のために追うべき指標ですが、その数が多すぎると管理が煩雑になり、本来の目的を見失う可能性があります。特に大企業では数百ものKPIを設定している例もありますが、中小企業では10個程度に絞る方が効果的です。
たとえば、売上をKPIとして設定する場合、「新規顧客の獲得数」「リピート顧客の増加」「商品単価の向上」「クロスセル率の向上」「営業訪問数」など、分解の仕方によって無数のKPIを設定することが可能です。しかし、すべての指標を追おうとするとリソースが分散し、重要なアクションに集中できなくなります。
KPIの本質は、その名の通り「Key」、つまり重要な指標に絞ることです。
中小企業ではKPIを厳選することで、チーム全体が同じ方向を向き、限られたリソースを最大限活用できます。
KPIを設定する際には、「その指標が目標に直結しているか」を考えるのはもちろんですが、「その指標が目標達成にどれだけ貢献するのか」を基準に選ぶことが重要です。
たとえば、現状の課題が「新規顧客の獲得」であるなら、「新規顧客との商談数」をKPIに設定し、他の指標は参考値として扱うと良いでしょう。
また、会社の状況は刻々と変わっていくため、予実管理の中で現状にそぐわなくなったKPI(①目標達成に直結しなくなったまたは②あまり貢献しなくなった)は修正を加えていく必要があることも添えておきます。
例えば、コロナ禍で営業手法が変化を余儀なくされた会社もあったかと思います。その場合、たとえば下記のようなKPIの見直しがなされたかもしれません。
- これまでのKPI=顧客への直接訪問数
- 見直し後のKPI=顧客への架電数、問い合わせフォームへの営業件数
まとめ:予実管理とKPIで経営を強化しよう
いかがだったでしょうか。この記事では、KPIの設定と予実管理のポイントを紹介しました。
KPIと予実管理を活用することで、経営の透明性が向上し、課題発見と迅速な対応が可能になります。
まずはシンプルな方法から始め、徐々に改善を加えていきましょう。
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